潰瘍性大腸炎における「ステロイド抵抗」と「ステロイド依存」とは|川口・西川口の内視鏡検査|西川口・内科消化器内視鏡クリニック

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潰瘍性大腸炎における「ステロイド抵抗」と「ステロイド依存」とは

潰瘍性大腸炎における「ステロイド抵抗」と「ステロイド依存」とは|川口・西川口の内視鏡検査|西川口・内科消化器内視鏡クリニック

2026年7月24日

― ステロイドが効かない・やめられないと言われたら ―

「ステロイドを飲み始めたのに血便が止まらない」
「以前は効いたのに今回は効かない」
「ステロイドを減らすと症状が出る」
「このまま飲み続けても大丈夫なのだろうか」

潰瘍性大腸炎(UC)の診療では、このような悩みを抱える患者さんは少なくありません。

ステロイド(プレドニゾロンなど)は炎症を強力に抑える薬ですが、万能ではありません。また、長期間飲み続けることを前提とした薬でもありません。

現在の潰瘍性大腸炎治療では、「ステロイドを使わずに寛解を維持する(ステロイドフリー寛解)」ことが世界共通の目標となっています。

今回は、「ステロイドが効かない(ステロイド抵抗)」と「ステロイドがやめられない(ステロイド依存)」について、最新のガイドラインも踏まえて解説します。

ステロイドは「火事を消す薬」

潰瘍性大腸炎では、大腸の粘膜に強い炎症が起こります。

この炎症を火事に例えると、ステロイドは消防車のような存在です。

燃え広がった火を素早く消す力は非常に強力ですが、火が消えたあとも消防車が町中を走り回ることはありません。

同じように、ステロイドは寛解を導入する薬であり、寛解を維持する薬ではありません。

炎症が落ち着いたら、5-ASA製剤、生物学的製剤、JAK阻害薬などで再燃を防ぐことが現在の標準治療です。

「ステロイド抵抗」とは?

十分な量のステロイドを使用しても改善しない状態をステロイド抵抗(steroid-refractory UC)といいます。

報告によって多少異なりますが、中等症〜重症潰瘍性大腸炎では約20〜30%の患者さんで十分な効果が得られないとされています。

なぜステロイドが効かないのでしょうか?

原因は一つではありません。

① 患者さんごとに炎症の起こり方が異なる

潰瘍性大腸炎では、患者さんごとに炎症を引き起こしている免疫反応が異なります。

そのため、ステロイドで十分に炎症を抑えられる方もいれば、十分な効果が得られない方もいます。

② サイトメガロウイルス(CMV)感染

中等症〜重症ではCMV腸炎を合併することがあります。

CMV感染が原因であれば、ステロイドを増量しても改善せず、むしろ悪化することがあります。

そのため、大腸内視鏡で生検を行いCMV感染を調べることがあります。

③ Clostridioides difficile感染

UC患者さんではC. difficile感染症も重要です。

感染症による下痢とUCの悪化は非常によく似ているため、便検査で除外することが重要です。

④ 他の病気の可能性

改善しない場合には

  • クローン病
  • 腸結核
  • アメーバ性腸炎
  • 虚血性腸炎
  • 薬剤性腸炎

なども考慮します。

「ステロイド依存」とは?

ステロイドを減量すると再燃し、中止できない状態をステロイド依存といいます。

患者さんからは

「減らすとまた血便が出るので怖い」

という声をよく聞きます。

しかしこれは、

「ステロイドがよく効いている」

のではなく、

「ステロイドがないと病気を抑えられない状態」

と考えられます。

ステロイド治療を受けた患者さんの**約20〜30%**がステロイド依存になると報告されています。

ステロイドを何回も使うと効きにくくなるのでしょうか?

「前回はよく効いたのに今回は効かない」

という患者さんは珍しくありません。

一方で、「2回目、3回目になると必ず効きにくくなる」ことが証明されているわけではありません。

しかし、ステロイド治療を繰り返し必要とする患者さんでは、ステロイド依存やステロイド抵抗へ移行しやすくなることが知られています。

また、再燃するたびに病気の性質や炎症の程度が変化したり、感染症を合併したりすることで、以前と同じような効果が得られないことがあります。

そのため現在では、再燃するたびにステロイドを繰り返す治療は推奨されていません。

なぜ最近は早く生物学的製剤を使うのでしょうか?

近年、潰瘍性大腸炎の治療方針は大きく変わりました。

その中心となっているのが、ECCO(European Crohn’s and Colitis Organisation:欧州クローン病・大腸炎学会)です。

ECCOは、潰瘍性大腸炎やクローン病の診療ガイドラインを作成している世界的な専門学会で、その提言は世界中のIBD診療で広く参考にされています。

ECCOの最新ガイドラインでは、

「1年間に全身ステロイドを2回以上必要とする患者さんでは、ステロイドを繰り返すのではなく、生物学的製剤やJAK阻害薬などのステロイド節約療法(steroid-sparing therapy)を検討すべきである」

と推奨されています。

その理由は、

  • ステロイドでは長期寛解を維持できない
  • 繰り返し使用すると感染症や骨粗鬆症などの副作用が増える
  • ステロイド依存・抵抗へ移行しやすくなる
  • 生物学的製剤やJAK阻害薬によって、ステロイドを使わずに長期寛解を維持できる患者さんが増えている

からです。

つまり現在の考え方は、

「再燃したら毎回ステロイド」ではなく、

「1年に2回目の全身ステロイドが必要になったら治療戦略を見直す」

というものです。

現在は「ステロイドフリー寛解」を目指す時代です

現在では、

  • 抗TNF抗体製剤
  • 抗インテグリン抗体製剤
  • IL-23阻害薬
  • JAK阻害薬
  • S1P受容体調節薬

など、多くの治療薬が使用できるようになりました。

これらを適切なタイミングで導入することで、ステロイドを使わずに長期間寛解を維持できる患者さんが増えています。

まとめ

潰瘍性大腸炎では、「ステロイドが効かない(ステロイド抵抗)」ことや、「ステロイドをやめられない(ステロイド依存)」ことは決して珍しくありません。

現在の治療目標は、症状を一時的に抑えることではなく、ステロイドを使わずに長く寛解を維持すること(ステロイドフリー寛解)です。

世界的なIBD診療ガイドラインを作成しているECCOでも、1年間に全身ステロイドを2回以上必要とする場合には、ステロイドを繰り返すのではなく、生物学的製剤やJAK阻害薬などへの治療変更を検討することが推奨されています。

治療薬の選択肢は年々増えており、「ステロイドしかない時代」は終わりました。

当院では、患者さん一人ひとりの病状や生活スタイルに合わせて、ステロイドに頼らない長期寛解を目指した治療をご提案しています。潰瘍性大腸炎の治療について不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

参考文献

  1. Harbord M, et al. Third European Evidence-based Consensus on Diagnosis and Management of Ulcerative Colitis. J Crohns Colitis. 2017.
  2. Rubin DT, et al. ACG Clinical Guideline: Ulcerative Colitis in Adults. Am J Gastroenterol. 2019.
  3. Turner D, et al. STRIDE-II: Selecting Therapeutic Targets in Inflammatory Bowel Disease. Gastroenterology. 2021.
  4. ECCO Guidelines on Therapeutics in Ulcerative Colitis. J Crohns Colitis. 2026.
  5. 日本消化器病学会. 潰瘍性大腸炎診療ガイドライン(最新版)

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