ピロリ菌は家族にうつる?親子・夫婦間の感染リスク|川口・西川口の内視鏡検査|西川口・内科消化器内視鏡クリニック

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ピロリ菌は家族にうつる?親子・夫婦間の感染リスク

ピロリ菌は家族にうつる?親子・夫婦間の感染リスク|川口・西川口の内視鏡検査|西川口・内科消化器内視鏡クリニック

2026年7月24日

「母親がピロリ菌に感染していると、子どもにうつりますか?」

「配偶者がピロリ菌陽性でした。自分も感染するのでしょうか?」

「ピロリ菌はキスで感染しますか?」

ピロリ菌は人から人へ感染する細菌ですが、感染の多くは成人後ではなく、幼少期に家庭内で成立すると考えられています。

特に、母親から子どもへの感染は、疫学研究や菌株の遺伝子解析によって強く支持されています。一方、夫婦間で成人後に新しく感染する可能性はゼロではありませんが、頻度は高くありません。

本稿では、ピロリ菌の感染経路と親子・夫婦間の感染リスクについて、医学的エビデンスをもとに解説します。

ピロリ菌とは?

ピロリ菌(Helicobacter pylori)は、胃の粘膜に定着して慢性的な胃炎を起こす細菌です。

長期間の感染によって、

  • 萎縮性胃炎
  • 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
  • 胃MALTリンパ腫
  • 胃がん

などの発症リスクが高くなります。

感染しても症状がない方は少なくありません。一度持続感染が成立すると、自然に消失したり、除菌治療を受けたりしない限り、長期間にわたって胃内に存在します。

ピロリ菌はどのように感染するのでしょうか?

ピロリ菌の伝播経路は、現在も完全には解明されていません。

最も可能性が高いのは、感染者から別の人への人-人感染です。候補として、次の経路が考えられています。

  • 唾液などを介する口-口感染
  • 胃液や嘔吐物を介する胃-口感染
  • 便で汚染された手指、水、食品などを介する便-口感染

ただし、唾液や便からピロリ菌のDNAが検出されても、それだけでは感染力のある生菌が存在することの証明にはなりません。

嘔吐物や胃内容物から生きたピロリ菌が培養された研究はありますが、家庭内で実際にどの経路から感染したのかを直接証明することは困難です。

したがって、現在の医学的に正確な表現は、

ピロリ菌は主に家庭内で人から人へ伝播すると考えられるが、具体的な感染経路は一つに確定されていない

となります。

感染の多くは幼少期に成立します

ピロリ菌の感染は、主として幼少期に起こります。

日本の小児を対象とした研究でも、感染は人生の早い時期、特に6歳頃までに成立することが多いと報告されています。成人後にも新規感染は起こり得ますが、現在の衛生環境が整った日本では、日常生活の中で成人が初めて持続感染することは比較的まれです。

幼少期に感染しやすい理由としては、

  • 家族と接触する時間が長い
  • 感染した家族から繰り返し菌に曝露される
  • 幼少期特有の胃粘膜免疫が関与する可能性

などが考えられています。

「子どもは胃酸が弱いから感染する」と説明されることもありますが、乳児期以降の胃酸分泌だけで幼少期感染を説明する十分な根拠はありません。家族内での反復曝露と、年齢による胃粘膜環境や免疫応答の違いが複合的に関与すると考えられます。

親子間、とくに母親から子どもへの感染

親子間感染の中では、母親から子どもへの伝播が最も強く支持されています。

日本の小児を出生時から5年間追跡した研究では、ピロリ菌陽性の母親から生まれた子どもに感染が成立し、菌株のDNA解析によって母子間で同一または非常に近い菌株が確認されました。

その後の日本の研究でも、母子間伝播が日本における主要な感染経路であると報告されています。

さらに、家族内のピロリ菌の菌株を比較した研究では、父子間や兄弟間の感染も認められるものの、母子間感染が優位でした。

なぜ母親がリスク因子になるのでしょうか?

母親のピロリ菌そのものが父親の菌より感染力が強いわけではありません。

一般的に乳幼児期には、母親が、

子どもとの接触時間が長くなります。

そのため、母親が感染している場合、子どもが長期間にわたって繰り返し菌に曝露される可能性が高くなると考えられます。

つまり、「母親だから感染する」というより、

乳幼児と最も密接に接触する感染者が、主要な感染源になりやすい

と考えられます。

父親、祖父母、兄弟が主な養育者であれば、それらの家族から感染する可能性もあります。実際、感染した祖母が子どもの感染源になり得ることも日本から報告されています。

口移しやキスで感染するのでしょうか?

口移しや親子のキスは、口-口感染の候補として以前から疑われています。

しかし、現時点では、

親子のキスだけがピロリ菌感染の原因であることを直接証明した研究はありません。

唾液や歯垢からピロリ菌のDNAが検出されることはありますが、生きた菌を安定して培養できる頻度は低く、口腔内が恒常的な感染源であるかは確定していません。

一方、乳幼児への食べ物の口移しや噛み与えは、感染経路として完全に否定できないため、避けた方がよいでしょう。

出産時や母乳で感染するのでしょうか?

「母子感染」という言葉から、胎内感染や経産道感染を連想する方もいます。

しかし、ピロリ菌の母子感染は、通常、

出生後、幼少期の家庭生活の中で起こる感染

を意味します。

ピロリ菌は膣内に通常定着する細菌ではなく、経産道感染が主要経路であることを示す十分な証拠はありません。

また、母乳を介した感染も確立していません。母乳育児を中止する必要はなく、ピロリ菌陽性であることだけを理由に帝王切開を選択したり、授乳を避けたりする必要はありません。

夫婦間で感染しますか?

夫婦ともピロリ菌陽性というケースは珍しくありません。

しかし、それだけでは、結婚後に一方からもう一方へ感染したとは判断できません。

ピロリ菌感染者の多くは幼少期に感染しているため、夫婦がそれぞれ別の家庭で子どもの頃に感染し、成人後に夫婦となった可能性が高いからです。

夫婦間感染は頻繁ではない

日本人夫婦を対象にした研究では、21組中、同一菌株を持っていたのは1組だけであり、夫婦間伝播はまれと結論づけられました。

また、除菌後の患者を追跡した研究では、配偶者がピロリ菌陽性であっても再感染は多くなく、再陽性となった患者と配偶者の菌株も一致しませんでした。

したがって、夫婦間感染については、

起こる可能性はあるが、幼少期の親子間感染と比べて頻度は低い

と考えるのが妥当です。

ピロリ菌が見つかったら除菌治療を

ピロリ菌に感染している方が全員胃がんになるわけではありません。

一方、ピロリ菌感染は胃がんの最も重要な原因の一つであり、除菌によって将来の胃がんリスクをおおむね30~50%低下させることが期待できます。

ただし、除菌しても、すでに形成された萎縮性胃炎や腸上皮化生が完全に元に戻るとは限りません。

そのため、

除菌すれば胃がんにならない

のではなく、

除菌によって胃がんリスクを下げ、除菌後も胃粘膜の状態に応じて胃カメラを続ける

ことが重要です。

まとめ

  • ピロリ菌感染の大部分は幼少期に成立します。
  • 日本では母親から子どもへ感染する可能性が、疫学・菌株解析の両面から強く支持されています。
  • 母親がリスク因子となるのは、乳幼児との接触時間や介助の機会が多いためと考えられます。
  • 夫婦間感染は起こり得ますが、幼少期の親子感染と比べて頻度は非常に低いと考えられます。
  • ピロリ菌が見つかった場合は除菌治療を行い、除菌後も必要に応じて胃カメラを受けましょう。

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