2026年9月24日
「何日便が出なかったら便秘ですか?」
「毎日便が出ていても便秘になることがありますか?」
診察室でもよく聞かれる質問です。
便秘というと「何日も便が出ない状態」をイメージする方が多いと思います。しかし、医学的には排便回数が少ないだけで便秘と診断するわけではありません。
便の硬さ、強くいきまないと出ない、排便しても便が残っている感じがする、便が出口でつかえて出しにくい、といった症状も重要です。
今回は、慢性便秘症とはどのような病気なのか、どのような基準で診断するのかについて分かりやすく解説します。
そもそも便秘とは?
「便通異常症診療ガイドライン2023」では、便秘を「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義しています。
ここで重要なのは、「毎日便が出ない=便秘」ではないということです。
たとえば、食事量が少ない方では、作られる便の量も少なくなるため、排便回数が少なくなることがあります。そのため、排便回数や排便量が少ないというだけで、必ずしも便秘とはいえません。
反対に、毎日便が出ていても、
・便が硬くて出しにくい
・毎回強くいきむ
・排便してもすっきりしない
・便が残っている感じ(残便感)がある
・便が出口でつかえて出しにくい
といった症状が続いていれば、便秘症に該当することがあります。
つまり便秘を考えるうえでは、「何日に1回出るか」だけではなく、「十分な量の便を快適に排出できているか」が大切です。
慢性便秘症とは?
便秘の状態が慢性的に続き、日常生活に支障をきたしている状態を慢性便秘症と考えます。
「3日に1回しか便が出ない」という排便回数だけで診断するのではありません。
便が硬い、排便に時間がかかる、強くいきむ、残便感が続くなどの症状によって、日常生活に困っているかどうかも重要です。
そのため、同じ「2~3日に1回の排便」であっても、治療が必要な方もいれば、特に治療を必要としない方もいます。
慢性便秘症には診断基準があります
「便通異常症診療ガイドライン2023」では、便秘症の診断基準が示されています。
次の6項目のうち、2項目以上に当てはまることが、便秘症を診断する目安になります。
- 排便の4回に1回以上を目安に、強くいきまないと便が出ない
- 排便の4回に1回以上を目安に、コロコロした便や硬い便が出る
- 排便の4回に1回以上を目安に、排便後も「まだ便が残っている」と感じる
- 排便の4回に1回以上を目安に、便が肛門付近でつかえている、または出しにくいと感じる
- 排便の4回に1回以上を目安に、指で便を出す、肛門周囲を押すなど、排便を助ける必要がある
- 自然に出る便の回数が週3回未満である
「排便の4回に1回以上」というのは、おおむね25%以上の排便でその症状がみられるという意味です。
一度だけ便が硬かった、たまたま強くいきんだということではなく、このような症状が繰り返しているかどうかをみています。
また、この診断基準からも分かるように、排便回数についての項目は6項目のうち1つだけです。
「便が週に何回出るか」だけではなく、便の硬さや排便のしやすさを含めて判断することが大切です。
毎日便が出ていても慢性便秘症のことがあります
これは便秘を理解するうえで、とても重要なポイントです。
毎日排便していても、毎回強くいきまないと出ない、硬い便しか出ない、排便後も便が残っている感じがする、といった症状が続いていれば、便秘症に該当することがあります。
反対に、毎日排便がなくても、2~3日に1回程度、無理なく快適に排便できているのであれば、必ずしも便秘症とは限りません。
「毎日出ているから便秘ではない」「毎日出ないから便秘」という判断ではありません。
「慢性」とはどのくらいの期間?
診断基準では、
「6か月以上前から症状があり、最近3か月間は便秘症の基準を満たしている」
ことが慢性便秘症の一つの目安となっています。
これは国際的に用いられているRome IV基準を参考にした考え方です。
ただし、「6か月たつまで受診や治療をしてはいけない」という意味ではありません。
便秘によってすでに日常生活に支障が出ている場合には、6か月になるまで受診を待つ必要はありません。
便秘の原因は一つではありません
慢性便秘症にはさまざまな原因があります。
腸の動きや排便機能の問題だけでなく、服用している薬、糖尿病や甲状腺機能低下症などの病気が便秘の原因になることもあります。
また、注意が必要なのが、大腸がんなどによって大腸が狭くなり、便が通過しにくくなる「狭窄性器質性便秘症」です。
すべての便秘の方に大腸カメラが必要なわけではありませんが、これまで便秘ではなかった方に新しく便秘が出現した場合などには、便秘の原因となる病気が隠れていないか確認することが重要です。
どのような便秘なら受診したほうがよいですか?
便秘が続いて生活に支障がある場合には、一度消化器内科へ相談することをおすすめします。
特に、
・以前はなかった便秘が急に始まった
・便秘が徐々に悪化している
・血便がある
・便が以前より細くなった
・貧血を指摘された
・原因の分からない体重減少がある
・腹痛や腹部膨満を伴う
・便秘薬を使っても改善しない
といった場合には、便秘の原因を調べることが大切です。
また、強い腹痛や著しい腹部膨満、繰り返す嘔吐があり、便もガスも出ない場合には、腸閉塞など緊急性のある病気の可能性があります。このような場合には早めに医療機関を受診してください。
便秘の場合、大腸カメラは必要ですか?
慢性便秘症だからといって、すべての方に大腸カメラ(大腸内視鏡検査)が必要なわけではありません。
まずは、便秘がいつから始まったのか、便の硬さ、排便回数、血便の有無、服用している薬、これまでの病気などを確認します。
そのうえで、症状や年齢などから大腸がんなどの病気を除外する必要があると判断した場合には、大腸カメラを検討します。
特に、血便、貧血、原因不明の体重減少、新しく出現した便通の変化などがある場合には、一度消化器内科へご相談ください。
まとめ
慢性便秘症は、単に「何日も便が出ない病気」ではありません。
排便回数だけでなく、便の硬さ、強くいきむか、残便感があるか、便が出口でつかえる感じがあるかなどを総合して判断します。
そのため、「毎日便が出ているから便秘ではない」「2~3日に1回だから便秘である」と、排便回数だけで判断することはできません。
実際の日常診療では、診断基準の項目や期間だけで判断するわけではありません。
「本来体外に排出すべき便を、十分量かつ快適に排出できない状態」を便秘と考え、その状態が続いて日常生活に支障が出ている場合には、症状や経過、背景にある病気などを総合的に判断したうえで、慢性便秘症として治療を行います。
便秘が続いて生活に支障がある場合や、以前と比べて便通が変化した場合には、一度消化器内科へご相談ください。
大腸内視鏡検査をご希望の方は、当院ホームページからご予約いただけます。
【大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の予約はこちら】
https://patient.digikar-smart.jp/institutions/f1014bc7-5f4a-46f2-92c8-3d3a38afe245/reserve
【大腸内視鏡検査について詳しくはこちら】
https://nkawaguchi.com/endoscopy/colon_camera/#link01
参考文献
- 日本消化管学会編.便通異常症診療ガイドライン2023―慢性便秘症.南江堂,2023.
- Lacy BE, Mearin F, Chang L, et al. Bowel Disorders. Gastroenterology. 2016;150:1393-1407.
- Rome Foundation. Rome IV Criteria: Functional Constipation.