2026年7月22日
「最近、便が細くなった気がする。」
「便が細いから大腸がんが心配。」
このようなことで受診される患者さんがしばしばいらっしゃいます。
確かに、大腸がんによって便が細くなることはあります。しかし、便が細いという症状だけで大腸がんを疑うことはできません。
実際の消化器内科外来では、便が細くなる原因の多くは、食生活や便秘、過敏性腸症候群(IBS)、大腸憩室症などの良性疾患です。
今回は、「便が細くなる原因」と「どのような場合に大腸内視鏡検査を受けるべきか」について解説します。
便の太さは何で決まるのでしょうか?
便の太さは、主に次の3つの要素で決まります。
- 便の量
- 大腸がどれだけ広がるか(コンプライアンス)
- 肛門がどれだけ開くか
つまり、「便が細い=腸が狭くなっている」とは限りません。
最も多い原因は「食事量」と「便秘」
便が細くなる原因として最も多いのは、実は食事量の減少です。
便は、食物繊維や水分、腸内細菌、消化されなかった食物などからできています。
ダイエットや食欲低下で食べる量が減ると、便の量そのものが少なくなり、自然と便も細くなります。
また、便秘になると便量が少なくなったり、小分けに排便したりするため、細い便になることも珍しくありません。
過敏性腸症候群(IBS)でも便は細くなります
ストレスや自律神経の影響を受ける過敏性腸症候群(IBS)では、腸が一時的に強く収縮し、便が細くなることがあります。
特徴として、
- 日によって便の太さが変わる
- 朝だけ細い
- ストレスで悪化する
といった傾向があります。
中高年に多い「大腸憩室症」も原因になります
50歳を過ぎると増えてくる大腸憩室症でも、便が細くなることがあります。
内視鏡検査では、憩室が多い患者さんほどS状結腸が狭く、空気を入れても十分に広がらないことをよく経験します。
その理由については、次回のコラムで詳しく解説します。
大腸がんではなぜ便が細くなるのでしょうか?
大腸がんでは、腫瘍が腸の内側へ張り出すことで、その部分だけが狭くなります。
そのため便が細くなることがありますが、便柱狭小だけで大腸がんと判断することはできません。
実際に2008年、Applebyらは「細い便(low caliber stool)だけでは大腸がんを示す根拠にはならない」と報告しています。
つまり、「便が細い」という症状は、大腸がんだけでなく、多くの良性疾患でも起こるのです。
大切なのは「便が細いこと」ではなく「変化」です
最も重視するのは、便の太さそのものではありません。
次のような変化がある場合は、大腸内視鏡検査をおすすめします。
- 最近になって急に便が細くなった
- 数週間から数か月かけて徐々に細くなってきた
- 血便がある
- 貧血を指摘された
- 体重が減っている
- 50歳以上で初めて症状が出た
- 家族に大腸がんの方がいる
これらは、大腸がんをはじめとする器質的疾患を疑うサインです。
まとめ
便が細くなる原因として最も多いのは、
- 食事量の減少
- 食物繊維不足
- 便秘
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 大腸憩室症
などの良性の原因です。
一方で、便の細さに加えて血便や貧血、体重減少などを伴う場合には、大腸がんなどの病気が隠れていることもあります。
「便が細い」という症状だけで過度に心配する必要はありませんが、「以前と違う変化」が続く場合には、一度消化器内科で相談することをおすすめします。
次回は、多くの患者さんが意外に知らない「なぜ大腸憩室症や過敏性腸症候群(IBS)で便が細くなるのか?」について、内視鏡所見や最新の研究をもとに詳しく解説します。