2026年7月04日
潰瘍性大腸炎治療の基本となる薬を解説します
「ペンタサとリアルダは何が違うのでしょうか?」
「アサコールからリアルダへ変更すると言われました。」
「どの薬が自分に合っているのでしょうか?」
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)と診断されると、多くの患者さんが最初に処方されるのが5-ASA製剤です。
5-ASAとは、5-アミノサリチル酸(5-Aminosalicylic Acid:5-ASA)の略称で、大腸の炎症を直接抑える作用を持つ薬です。
軽症から中等症の潰瘍性大腸炎では第一選択薬として使用され、活動期の症状を改善するだけでなく、症状が落ち着いた後も再燃を予防するために長期間服用します。
現在、日本で主に使用されている5-ASA製剤は3種類あります。
- ペンタサ®(製造販売:杏林製薬株式会社)
- アサコール®(製造販売:ゼリア新薬工業株式会社)
- リアルダ®(製造販売:持田製薬株式会社)
いずれも有効成分は同じメサラジンですが、薬が腸のどこで放出されるかという仕組みが異なります。
今回は、それぞれの特徴や違いについて、わかりやすく解説します。
潰瘍性大腸炎が広く知られるようになったきっかけ
潰瘍性大腸炎が、日本でも広く知られるようになったきっかけの1つが、安倍晋三元首相です。
安倍元首相は10代で潰瘍性大腸炎を発症し、長年この病気と闘病されてきました。
2007年には病状悪化のため首相を辞任しましたが、その後、新しいメサラジン製剤であるアサコールを含む治療の進歩により病状が改善し、2012年には再び首相に就任しました。
2012年の自民党総裁選での街頭演説では、
「アサコールという画期的新薬が開発され、今は心身ともに本当に健康な状況になっています」
と語っています。
この出来事は、「潰瘍性大腸炎になっても、適切な治療を受ければ仕事や社会生活を続けられる」ことを、多くの患者さんに示した象徴的な出来事となりました。
出典
- 安倍晋三氏 自民党総裁選街頭演説(2012年)
- 東京医科歯科大学「foosetsu」
- 日本消化器病学会「消化器のひろば」
5-ASA製剤とは?
5-ASA製剤は、潰瘍性大腸炎治療の基本となる薬です。
大腸粘膜の炎症を直接抑えることで、
- 血便
- 下痢
- 腹痛
- 粘液便
などの症状を改善します。
さらに、症状が改善した後も服用を継続することで、再燃を予防し、長期間にわたり寛解を維持することが期待できます。
ステロイドや免疫調節薬、生物学的製剤とは異なり、免疫機能を強く抑える薬ではないため、安全性が高く、長期間服用しやすいことも特徴です。
ペンタサ・アサコール・リアルダの違い
3種類とも有効成分はメサラジン(5-ASA)ですが、薬を放出する仕組み(ドラッグデリバリーシステム)が異なります。
それぞれ詳しくみていきましょう。
ペンタサ®の特徴
ペンタサは、小腸から大腸まで時間をかけて少しずつメサラジンを放出する時間依存型製剤です。
そのため、小腸にも薬が届くことから、潰瘍性大腸炎だけでなくクローン病にも適応があります。
また、
- 錠剤
- 顆粒
- 坐剤
- 注腸
と剤形が豊富で、炎症の範囲に応じて使い分けられることも大きな特徴です。
一方で、小腸でも薬が放出されるため、大腸だけに効率よく薬を届けるという点では、アサコールやリアルダに比べるとやや不利と考えられています。
アサコール®の特徴
アサコールは、腸内のpHが約7以上になるとコーティングが溶けるpH依存型製剤です。
そのため、回腸末端から大腸でメサラジンが放出され、大腸に効率よく薬を届けることができます。
潰瘍性大腸炎には非常に適した薬ですが、小腸ではほとんど薬が放出されないため、クローン病には適応がありません。
安倍元首相の病気が改善したことで一般にも広く知られるようになった薬であり、日本における潰瘍性大腸炎治療の歴史を語るうえで欠かせない薬の一つです。
リアルダ®の特徴
リアルダは、MMX(Multi Matrix System)という特殊な放出システムを採用しています。
腸内でコーティングが溶けた後も、親水性基剤と親油性基剤からなるマトリックス構造によって、大腸全体でゆっくりとメサラジンを放出します。
最大の特徴は、1日1回の服用でよいことです。
仕事や学校で昼に薬を飲むことが難しい方でも継続しやすく、飲み忘れの防止につながります。
近年では、服薬アドヒアランス(飲み忘れの少なさ)の面からも、多くの患者さんに使用されています。
3割負担では薬代はいくら?
※以下は薬剤費のみのおおよその目安です。診察料・処方料・調剤料は含みません。また、薬価改定により変更される場合があります。

薬代だけを見るとアサコールが比較的安価ですが、実際には薬価だけで薬を選ぶことはありません。
炎症の範囲や重症度、服薬回数、飲みやすさ、生活スタイルなどを総合的に考えて、その患者さんに最も適した薬を選択することが重要です。
まとめ
5-ASA製剤は、5-アミノサリチル酸(5-Aminosalicylic Acid:5-ASA)を有効成分とする、潰瘍性大腸炎治療の基本となる薬です。
現在、日本では
- ペンタサ:小腸から大腸まで広く作用し、クローン病にも使用できる
- アサコール:大腸へ効率よく薬を届ける
- リアルダ:1日1回で服用しやすく、大腸全体に持続的に作用する
という特徴があります。
どの薬にも長所があり、「最も良い薬」は患者さんによって異なります。
潰瘍性大腸炎は、適切な治療を継続することで、多くの患者さんが仕事や学業、家庭生活を送りながら良好な状態を維持できる時代になりました。
当院では、患者さん一人ひとりの病状や生活スタイルに合わせて最適な治療をご提案しています。
血便や下痢が続く方、現在の治療で十分な効果が得られていない方、治療薬について詳しく知りたい方は、お気軽にご相談ください。