2026年7月02日
「下痢が何週間も続いている」
「腹痛があるけれど、ストレスのせいでしょうか?」
「血便もあるけれど、過敏性腸症候群(IBS)なの?」
このような症状で受診される患者さんは少なくありません。
実は、潰瘍性大腸炎(UC)と過敏性腸症候群(IBS)は症状がよく似ています。どちらも腹痛や下痢を起こしますが、原因や治療法は全く異なります。
特に潰瘍性大腸炎は、早期診断・適切な治療が重要な病気です。「IBSだと思って様子を見ていたら潰瘍性大腸炎だった」というケースも珍しくありません。
今回は、消化器内科専門医が、潰瘍性大腸炎とIBSの違いについてわかりやすく解説します。
潰瘍性大腸炎とは?
原因は完全には解明されていませんが、
免疫の異常
遺伝的要因
腸内細菌の変化
環境因子
などが複雑に関与すると考えられています。
日本では患者数が年々増加しており、2023年の全国疫学調査では約31万人と推計されています。
20〜40代で発症することが多く、国の指定難病にもなっています。
過敏性腸症候群(IBS)とは?
IBSは、大腸に炎症や潰瘍などの異常はないにもかかわらず、
腹痛
下痢
便秘
お腹の張り
などが続く病気です。
ストレスや生活習慣、腸の知覚過敏、腸内細菌の変化などが関係すると考えられています。
健康診断や大腸カメラでは異常が見つからないことが特徴です。
潰瘍性大腸炎とIBSの違い
最も大きな違いは、
潰瘍性大腸炎は「炎症の病気」、IBSは「機能の病気」
という点です。

症状だけでは区別できないこともあります
実際には、
下痢
腹痛
排便すると楽になる
などは両方の病気でみられます。
そのため症状だけで診断することはできません。
特に、
若い方
下痢が続く方
市販薬で改善しない方
では、大腸カメラが必要になることがあります。
血便がある場合はIBSではありません
患者さんから
「ストレスで血便も出るのでしょうか?」
と聞かれることがあります。
IBSでは血便は基本的にみられません。
血便がある場合には、
潰瘍性大腸炎
クローン病
感染性腸炎
大腸ポリープ
大腸がん
痔
などを調べる必要があります。
鮮血便でも自己判断せず、消化器内科を受診することをおすすめします。
潰瘍性大腸炎とIBSは一緒に起こることもあります
意外かもしれませんが、
潰瘍性大腸炎が落ち着いていても、IBSのような症状が残る患者さんは少なくありません。
大腸カメラでは炎症が治っているのに、
お腹がゴロゴロする
下痢が続く
腹痛がある
というケースがあります。
このような場合には、
炎症だけではなく、
IBS
腸内細菌の乱れ
胆汁酸吸収異常
小腸内細菌増殖症(SIBO)
食事内容
なども考慮しながら治療を進めます。
このような症状がある方は消化器内科を受診しましょう
- 血便がある
- 下痢が2〜4週間以上続く
- 夜中にも下痢で起きる
- 発熱を伴う
- 体重が減ってきた
- 貧血を指摘された
- 家族に潰瘍性大腸炎やクローン病の方がいる
これらはIBSだけでは説明できない場合があります。
大腸カメラで正確な診断が重要です
潰瘍性大腸炎を診断するためには、
大腸カメラ
生検(組織検査)
が重要になります。
一方、IBSは大腸カメラで異常がないことを確認したうえで診断されることもあります。
つまり、大腸カメラは両方の病気を見分けるために非常に重要な検査です。
まとめ
潰瘍性大腸炎と過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や下痢など共通する症状がありますが、病気の本質は大きく異なります。
潰瘍性大腸炎は大腸に炎症が起こる指定難病であり、適切な治療を続けることで炎症を抑え、症状だけでなく内視鏡でもきれいな状態(内視鏡的寛解)を目指すことが重要です。
一方、IBSは炎症ではなく腸の働きの異常によって起こる病気で、生活習慣やストレスへの対応、薬物療法を組み合わせて症状の改善を目指します。
「ストレスだからIBSだろう」と自己判断せず、血便、長引く下痢、体重減少、夜間の下痢などがある場合には、潰瘍性大腸炎などの病気が隠れている可能性があります。
症状が続く場合は、早めに消化器内科を受診し、必要に応じて大腸カメラで正確な診断を受けることが大切です。