2026年6月04日
はじめに
かつて胃がんは日本人の「国民病」とも呼ばれ、多くの命を奪う病気でした。現在でも胃がんは日本人にとって身近ながんの一つであり、毎年多くの方が胃がんと診断されています。
一方で、胃がんを取り巻く状況は大きく変化しています。胃がんの罹患率(人口あたりの発症率)は長期的にみると減少傾向にあり、若い世代では胃がんになる方は明らかに減っています。
その最大の理由は、「ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)」の感染率低下です。胃がんの大部分はピロリ菌感染が原因とされており、上下水道の整備などによる衛生環境の改善や、健康保険によるピロリ菌除菌治療の普及によって、若年世代の感染率は大きく低下しました。
しかし、ここで注意が必要です。
胃がんの罹患率は低下しているものの、高齢化社会の影響により、過去にピロリ菌へ感染していた世代での発症が続いています。そのため、現在でも毎年10万人以上が新たに胃がんと診断されており、決して過去の病気になったわけではありません。
また、胃がんのタイプも変化しています。以前は胃の出口側(幽門部)に発生する胃がんが多くみられましたが、近年では食生活の欧米化や肥満、逆流性食道炎の増加に伴い、食道と胃の境目である噴門部付近に発生するがんが増加しています。
つまり、「ピロリ菌を除菌したから安心」「ピロリ菌に感染していないから胃がんにならない」というわけではなく、定期的な胃がん検診の重要性は今も変わりません。
日本の胃がん検診の歴史
日本の胃がん検診の歴史は半世紀以上に及びます。
1960年代、日本では胃がんによる死亡者数が非常に多く、早期発見を目的として胃X線検査(バリウム検査)による集団検診が始まりました。
その後、1983年には老人保健法に基づく対策型検診として全国に普及し、日本の胃がん対策の中心的な役割を果たしてきました。胃X線検診は多くの研究で胃がん死亡率を低下させる効果が示されており、日本独自の成功したがん検診制度として世界的にも高く評価されています。
さらに1990年代後半になると、医療技術の進歩により胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が急速に普及しました。
胃カメラは胃の粘膜を直接観察できるため、小さな早期胃がんや前がん病変の発見に優れており、現在では胃がん診断の中心的な検査となっています。
こうした研究成果を受けて、2014年の「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」では、胃カメラが国の推奨する対策型胃がん検診として正式に導入されました。
現在は50歳以上の方を対象に、2年に1回の胃カメラ検診が推奨されています。
日本の胃がん検診の課題
胃がん検診の有効性は十分に証明されています。しかし、日本には大きな課題があります。
それは受診率の低さです。
隣国の韓国では国家レベルで胃がん検診を推進した結果、40歳以上の胃がん検診受診率が70%を超え、胃がん死亡率の大幅な減少に成功しています。
一方、日本では50〜69歳における対策型胃がん検診の受診率は14.3%(職域検診を除く)にとどまっています。
(*対策型胃がん検診とは、市区町村が住民の胃がん死亡率減少を目的として公共施策として実施する検診です。)
胃がんは早期にはほとんど症状がありません。
胃痛や体重減少、食欲低下などの症状が現れたときには、すでに進行していることもあります。
「症状がないから大丈夫」
「忙しくて検査を受けていない」
という方こそ、定期的な胃がん検診が必要です。
どれほど優れた検診制度があっても、受診されなければ胃がんによる死亡を減らすことはできません。
川口市胃がん内視鏡健診を活用しましょう
川口市では、50歳以上の市民を対象に胃がん内視鏡健診(胃カメラ検診)を実施しています。
対象者は2年に1回受診することができ、自己負担額は2,000円です。さらに70歳以上の方は無料で受けることができます。
通常、胃カメラ検査を自費で受ける場合は数千円から1万円程度の費用がかかることがありますが、市の制度を利用することで非常に少ない負担で検査を受けることが可能です。
胃がんは早期発見できれば内視鏡治療のみで治療できる可能性が高い病気です。
特に、
- 50歳以上の方
- ピロリ菌感染歴がある方
- ピロリ菌除菌後の方
- 胃がんの家族歴がある方
- 胃潰瘍や萎縮性胃炎を指摘されたことがある方
は定期的な胃カメラ検査をおすすめします。
まとめ
胃がんは減少傾向にあるとはいえ、現在でも毎年10万人以上が新たに診断される重要ながんです。
日本では長年にわたり胃がん検診が行われてきましたが、現在はより精度の高い胃カメラ検診が主流となっています。
しかし、検診制度が整備されていても受診率は依然として低く、多くの方が検診の恩恵を受けられていません。
川口市では50歳以上の方を対象に、2年に1回、自己負担2,000円(70歳以上は無料)で胃がん内視鏡健診を受けることができます。
胃がんは症状が出てからではなく、症状のないうちに見つけることが重要です。
ご自身やご家族の健康を守るためにも、ぜひ川口市胃がん内視鏡健診をご活用ください。