過敏性腸症候群
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群(IBS)とは、特に消化器の疾患がないにも関わらず、腹痛と便秘、または下痢を慢性的に繰り返す病気です。
消化器内科を受診する人の約3分の1を占めるともいわれています。生命に関わる病気ではありませんが、お腹の痛み、下痢、便秘、不安などの症状で、通勤・通学などに支障を来すことが多く、生活の質が著しく低下するため適切な治療が求められます。
男性よりも女性に多くみられる病気です。
また、男性は下痢型が多く、女性は便秘型が多い傾向にあります。
過敏性腸症候群(IBS)の原因はまだ完全に解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。主な原因としては以下のようなものがあります。
これらの要因が複雑に絡み合って、IBSの症状を引き起こすと考えられています。
久里浜医療センターの水上先生は体質の差による個人差がIBSの原因に重要な役割を果たすと述べています。
その著書『IBSを治す本(法研)』の中で、“IBSは”体質”によっておこる病気です。同じ環境で生活していても、IBSになる人とならない人がいる。これはまさに”体質”の差です”と述べられています。
そして、IBSを原因から4つのタイプに分類しています。
個人的には水上先生のIBSの分類は非常に分かりやすいと思います。
過敏性腸症候群は症状だけで診断することはできません。大腸がんなどの悪性腫瘍や炎症性腸疾患などの病変がなどの器質的疾患が隠れていないか、また、甲状腺機能異常症などの内分泌疾患や糖尿病、寄生虫疾患の有無を調べます。
検査としては、血液検査、便検査、大腸内視鏡検査、腹部CT検査によって器質的疾患を除外します。
過敏性腸症候群の治療は、生活様式の改善、食事療法、薬物療法が基本になります。
暴飲暴食や深夜の食事を避けて3食規則的な食事を心がけましょう。食事を抜いたり、あとでまとめて食べたりといった不規則な食生活は排便リズムを乱し、症状を増悪させるので、食事の時間を規則正しくしましょう。
乳製品、炭水化物もしくは脂質の多い食事、香辛料、アルコール、コーヒーを避けることで腸への負担が減り、症状が軽減することがあります。
生活習慣や食事の見直しは、IBSの症状改善の鍵となることが多いため、無理のない範囲で取り組むことが大切です。
薬物療法は、生活習慣の改善だけではIBSの症状が改善しない場合に行われる治療法です。主に以下のような薬剤が用いられます。
基本的な薬剤
消化管機能調節薬:腸の動きを整え、下痢や便秘の症状を改善するための薬です。
プロバイオティクス:ビフィズス菌や乳酸菌など、腸内の有用な細菌を増やし、腸内環境を改善します。
高分子重合体製剤:水分を吸収し、便の水分バランスを整える薬で、便が硬すぎたり柔らかすぎたりするのを防ぎます。
これらの薬剤は、下痢型、便秘型のいずれにも使用されることが多いです。
下痢型IBSに対する薬剤
セロトニン3受容体拮抗薬(5-HT3拮抗薬):腸の異常な動きを抑え、下痢を改善します。
下痢止め:下痢の症状を抑えるために使われます。
抗コリン薬:腹痛を和らげる効果があり、腸の筋肉の緊張を緩和します。
便秘型IBSに対する薬剤
粘膜上皮機能変容薬:便を柔らかくし、便秘を改善します。
下剤:必要に応じて補助的に使用され、腸の動きを促します。
漢方薬
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):腹痛や下痢の傾向を改善するために使用されます。
桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)および大建中湯(だいけんちゅうとう):便秘の改善に用いられます。
これらの薬は、患者さんの症状に合わせて選ばれ、複数の薬を組み合わせて使用することもあります。薬物療法は、症状の軽減と生活の質を向上させることを目指します。
また、心理的な不安が強い場合は抗うつ薬や抗不安薬が処方されることもあり、患者さんに合わせて複数の薬を組み合わせた薬物療法が行われます。
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