2025年4月29日

ヒトの食性とは?草食でも肉食でもない「果食動物」という考え方
「人間は本来、何を主食とする動物なのか?」
これはとても興味深いテーマです。
よく、「人間は草食だった」「肉食によって脳が発達した」「人間は雑食動物だ」という説を耳にしますが、果食動物(frugivore)という考え方はあまり語られません。
今回は、果食動物という視点から、ヒトの食性について考えてみたいと思います。
ヒトに最も近い動物、オランウータンやチンパンジーは果食動物
まず注目したいのは、ヒトと遺伝的に最も近い存在であるオランウータンやチンパンジーの食性です。
彼らは主に果物を食べる果食動物(frugivore)に分類されます。
チンパンジーやオランウータンの遺伝子は、ヒトと約99%同じ。
残り1%の違いは主に脳の大きさに関わる部分であり、消化管の構造や機能は非常によく似ているとされています。
この事実から考えると、ヒトも本来、草食・肉食・雑食のいずれとも異なる、果食動物という可能性を考慮する価値があるのではないでしょうか。
自然界における人間の立ち位置を見直すヒントになるかもしれません。
ヒトと肉食動物の違い
肉食動物と比較してみると、ヒトの体の作りは大きく異なっています。
腸の長さ
ヒトの腸は胴体の約12倍もの長さがありますが、肉食動物の腸は胴体の約3倍と非常に短いです。
これは、肉が体内で腐敗する前に速やかに排泄する必要があるためだと考えられています。
ビタミンCの合成能力
ヒトはビタミンCを食事から摂取しなければなりませんが、肉食動物は体内でビタミンCを合成する能力を持っています。
脂質代謝
ヒトは脂肪を大量に処理することができず、過剰に摂取すると動脈硬化を起こします。
一方、肉食動物はほぼ無制限に脂肪を代謝でき、動脈硬化にもなりにくいと言われています。
胃酸の強さ
肉食動物の胃酸は非常に強力で、ヒトの胃酸の10倍以上の酸性度を持つとされています。
消化酵素
ヒトの唾液にはアミラーゼという酵素が含まれており、果物などの糖質を消化しやすくなっています。
対して、肉食動物の唾液にはアミラーゼは含まれていません。
これらを踏まえると、ヒトが純粋な肉食動物ではないことは明らかだと感じます。
草食動物でも穀食動物でもない?
では、ヒトは草食動物なのでしょうか?
草食動物との違い
草食動物はセルラーゼという植物繊維を分解する酵素を持っていますが、ヒトにはそれがありません。
そのため、野菜を食事に取り入れることはできても、完全に主食にするのは難しいと考えられます。
穀食動物との違い
また、ヒトは穀物を生のまま食べることができません。
自然界では多くの鳥類が生の穀物を食べられますが、ヒトは火を使った調理が必要です。
同様に、芋や豆類も生では消化に適していない食品です。
自然状態で考えるヒトの食性|果食動物の可能性
さらに、道具や火を使えない自然状態を考えると、ヒトは雑食の幅が大きく制限されます。
生の穀物や生肉をそのまま食べることは困難であり、結果として頼ることができるのは、果物だったと考えられます。
つまり、自然の中で何も道具を使わなかった場合、ヒトは果食動物に最も近い食性を持っていた可能性が高いのではないでしょうか。
これは、チンパンジーやオランウータンの食性とも一致します。
まとめ|ヒトは「果食動物」という視点もありうる
今回ご紹介した内容から、ヒトは単なる草食でも肉食でも雑食でもなく、
「果物中心に食べる果食動物だった可能性」もあるのではないかと感じました。
もちろん、現代の食生活は非常に多様化しており、個々の体質や環境によって適した食べ方はさまざまです。
ただ、自然界でのヒトの姿を考える上で、果食動物という視点も一つの参考になるかもしれません。
ご興味のある方は、ぜひこの視点も取り入れながら、ご自身の食生活を見直してみてはいかがでしょうか。